恐ろしいタイトルですが、投資に危険はつきものです。
「100%稼げる」とか「安定した投資」なんていうものはありません。
ぼくも不動産投資に関わる仕事をしていたので、不動産投資を始めようとしている方の心に響けば、と思って記事を書きたいと思います。
区分マンションの不動産投資は稼げる?
そもそも不動産投資は稼げるのでしょうか?
一般的に、区分マンション投資は稼げません。
区分マンション投資でのセールストークは以下のようなものだと思います。
区分マンションのセールストーク
- 老後の資金の為に不動産投資を!価格の安い区分をお勧めします。
- 毎月、多少の手出しはありますが、年金と思って!支払いが終わればあなたの所有物です!
- 区分1部屋だと退去のリスクがあります。リスク分散のために2部屋目を買いませんか?
- サブリース付きの物件ですので、入退去のリスクはありません!
気を付けてください。
これら、全部騙されています!
老後の資金にならない!区分マンションの長期保有は危険!
老後、年金がもらえるか分からない時代です。
少なくとも、今現在年金をもらっている方よりももらえなくなる事は、ほぼ間違いないでしょう。
しかし、区分マンションを投資として購入し、それを老後の資金になると思っている方がいるのであれば、それは間違いです。
今、あなたは30歳だとしましょう。
30年のローンを組んで3500万円の都内の築15年の区分マンションを購入したとします。
家賃は19万円取れていると仮定しましょう。(表面利回り6.5%)
ローン返済時、あなたは60歳です。
返済が終わり、ここからいよいよ年金の代わりに不動産の収入が入ってきます!
と思われた方。間違いです。
分かりやすく考えるため、金利は3%の固定金利として計算します。
3500万を360回(30年)、金利3%(全期間固定)で返済するので、毎月147,561円を銀行に返済します。
購入時の修繕積立金は1万円、共益費1万円、管理費を家賃の5%として計算すると、
支出は以下の通りです。
返済額(月) | 147,561円 |
修繕積立金(月) | 10,000円 |
共益費(月) | 10,000円 |
管理費(家賃の5%) | 9,500円 |
支出合計 | 177,061円 |
毎月、12,939円の黒字になります。
つまり、360ヶ月(30年)で466万円のプラスになる計算です。
本当にそうでしょうか?
実はこの計算は、常に入居している場合の数字であることと、家賃の下落率を考慮していない数字であるため、実際にはこの通りになりません。
実際にはどうか
4年毎に2ヶ月空室期間があると仮定します。
平均して1年に0.5ヶ月の空室期間として計算すると、入居率は95%です。
また、賃料の下落率は5年毎に2.5%として計算します。
期間 | 下落後の月額賃料 | 95%入居時の月額賃料 |
0年~5年 | 190,000円 | 180,500円 |
5年~10年 | 185,250円 | 175,988円 |
10年~15年 | 180,619円 | 171,588円 |
15年~20年 | 176,104円 | 167,299円 |
20年~25年 | 171,701円 | 163,116円 |
25年~30年 | 167,408円 | 159,038円 |
それぞれの期間の月額収支は以下の通りです。
期間 | 95%入居時の月額賃料 | 月単位の支出 | 月額収支 |
0年~5年 | 180,500円 | 176,586円 | +3,914円 |
5年~10年 | 175,988円 | 176,360円 | -372円 |
10年~15年 | 171,588円 | 176,140円 | -4,552円 |
15年~20年 | 167,299円 | 175,926円 | -8,627円 |
20年~25年 | 163,116円 | 175,717円 | -12,601円 |
25年~30年 | 159,038円 | 175,513円 | -16,475円 |
それぞれの月額収支を5年間(60ヶ月)に直し、足し合わせると30年間で-232万円になります。
30年間入居率平均95%でこれです。
更に、固定資産税・都市計画税、室内の修繕費用、入退促進費用などがかかるほか、通常、修繕積立金は年を重ねるごとに増えていくため、収支はもっともっと悪いはずです。
ローンを払い終えて売却すればいいのでは?
「手出しが当たり前の区分マンション投資」と言われて買っている方もいるかもしれません。
ローンを払い終えたら売却しても良し、住んでも良し。
そんなうたい文句もありますが、これも間違い。
よく考えてください。
30年かけてローンを返済し、手元に残ったのは購入時の築年数+30年のマンション。
保有期間中は手出しが当たり前だったため、まともな室内修繕もできず、設備はボロボロ。
高く売れますか?
自分が住むためにいくらの修繕費用をかけますか?
実際にはプラスになることなどほとんどないのです。
正直、区分マンションでプラスになる投資があったとするならば、2010年~2014年くらいの間に購入し、スルガ銀行のかぼちゃの馬車事件が起きるまでの間に売却をした「短期保有の方」くらいだったと思います。
※2015年頃~かぼちゃの馬車事件が起きる直前に買った方はご愁傷様です
区分マンション投資のまとめ
結果、区分マンション投資は正直厳しいというのがぼくの感想です。
とはいえ、金額が比較的小さいため、取り扱いしやすい点で考えるのであれば、初心者には魅力的に見えてしまいます。
しかし、ぼく個人としては区分マンション投資は「自己資金で買える範囲」の物件に限った方が良いと思います。
一棟マンション・アパートの不動産投資は稼げる?
個人的にはこちらの方が稼げると思います。
ただし、こちらも無理をして都心の一等地に買う必要はありません。
融資を受けて買うのであれば、金利と相談して適正な利回りで購入することをオススメします。
都心の一等地を買っているのは「現金を持て余して銀行に預けておくより金になる」という人たちです。
融資を受けてまで買う必要はありません。
(何しろ利回り3%台とかの世界ですから…)
空室に対するリスクを対策打てるのであれば、地方の物件なんかは利回りも高くてオススメです。
最近は融資が出づらくなったので、買いたくても買えない状況ではありますが。
一棟マンション・アパートには一定支払いの共益費がない
通常、分譲マンションの場合、共用部を使うための費用=共益費が支出項目として存在しますが、一棟まるごと所有するのであれば、管理組合がないため、マンションの所有者が共益費の支払いをします。
そのため、場合によっては共益費が収入に代わる可能性があります。
例えば、アパートの場合、共益費としてかかるのは、共用部電気代、貯水槽メンテナンス費用など。
これらは基本的に固定費の為、人の増減によって金額が変わりにくいものです。
もちろん、エレベーターがあれば、エレベーターの電気代の様に使用頻度によって金額が変わるものもありますが、通常、共用部の費用はほぼ固定費です。
ということは、入居が多ければ多いほど、共益費も収益になり得ます。
その点が区分と一棟物の違いかと思います。
最終的には自己責任
不動産屋に騙されて買ったとか、うまい話に乗ったために借金地獄になったとか、不動産投資を扱っているといろいろな相談があります。
しかし、ぼく個人としては、「最終的に判断したのはあなたです。責任はあなたにあります。」と言いたいです。
不動産屋は「自らの売り上げ」の為に営業をし、(言葉が悪いですが)カモに物件を売りつけます。
正直、ぼくはこういった営業をしたことはないので、どの様にやっているかはわかりませんが、話を持ち掛けられて、「納得」し、「購入の決断をした」のはあなた自身で、それは誰から見てもそう映ります。
何かあった時に、「不動産屋の方が儲かると言ったので」は通用しません。
投資は自己責任です。
ただし、本当に不動産屋の営業が「ここは必ず儲かります」といったのであれば、宅建業法違反です。
根拠のない事を伝え、その気にさせる行為は業法違反ですので、売買契約書に記載されている保証協会へ連絡してください。
もちろん、証明には証拠が必要ですが。
とはいえ、先程から申し上げている通り、「必ず」はありません。
リニアの計画がなくなる可能性もありますし、東京オリンピックの競技もなくなるかもしれません。
(少なくともマラソンは札幌になりましたしね)
どこまでのリスクを取り、どこまでの想定をするか。
これに尽きます。
相手は「不動産を買わせたいプロ」です。
もちろん法には触れないように言葉巧みに口説いてきます。
この時、知識を持ち合わせていること。
あとは自分のなかでリスクを想定して、覚悟を決めること。
この2点を持ち合わせた方は、ぜひ不動産投資をしてください。
知識と覚悟がある人にとっては、不動産投資はローリスクなものになるでしょう。